ひな飾り
新しい作品(ひな飾り)の制作工程のご説明
当工房では端午の節句用に"こいのぼり"を製作していますがご購入のお客様から
"ひな飾り"は無いの ? とのお問い合わせが多数あり、当工房独特の"ひな飾り"を製作すべく色々と試行錯誤を繰り返しておりました。
この度、当工房製の"ひな飾り"の制作を開始しましたので製作工程について説明させて頂きます。
制作にあたりまして下記に焦点をあて、他工房の製品に比べて遜色のない物に仕上げる事、
さらに低価格でのご提供を目標にしています。
もともと木工好きの私が趣味で始めた工房ですので利益を上げるのでは無く、あくまで大好きな木工を続けて行く為にはどうすれば良いか、まず収支をトントンにする必要があります。
私はトントンで良いんです。
しかし使用する木材はそのほとんどが広葉樹であり、価格もバカになりません。しかも機械の損料などを考慮すると材料費、その他経費などを相殺できる価格で提供する必要があります。
他工房での同様の商品は私から言いますと非常に高価格で、しかも陳腐な製品が多いように思います。このような高価格で販売して購入するお客様が居るのか ? 不思議に思うほど、とんでもない高価格で販売されています。
購入されるお客様のほとんどがお孫さんの為に購入される、お爺ちゃん、お祖母ちゃんが多いと思います。このような方は多少高価でも・・・・購入されます。
お子様用の木工商品は一握りの大手木工会社、工房が独占して ? 販売する構造となっていると常々思うようになり、そもそもこの様な製品はそれほど高価なものではありません。
使用する木材などはある程度の価格はするものの1個当たりの材料費(1個当たりの使用する材料はほんの少々)は製品価格に大きく影響するものではなく、そこには職人の給与、会社経営に必要なあらゆる経費が大きく載せられて高価なものとなっているのです。また誰でも製作できる物ではないからです。そこが盲点となり一部の工房が独占して高価格を維持しているのが現状だと思います。
若いお父さん、お母さんが自分の子供の為に気軽に購入できる価格が本来の姿ではないかと思います。
私は下記項目を重視し(木)本来の温かみのあるものにするようにします。
①木材(材料)吟味した物を使用し、特に杢目などをうまく生かしたものにする。
②製品梱包などは簡素なものとして価格を下げる。
③木工品としての温かみの有るものとし、陳腐な材料は一切しようしない。
(大手工房でも合板等を使用している物が多々ある。一般の人には判らない)
④買っていただいた方が納得できるものとする。他工房の製品に比べて遜色が無く、組み合わ
構造等が他工房より詳細にできているものとする。
⑤塗料などは一切使用せず、木本来の色を利用します。一部の他社製品は有毒な有機溶剤を
使用した物が有ります。特に子供さんの玩具などは気を付ける必要が有ります。
仕上げは日本古来の亜麻仁油によるオイルフニッシュとします。
以上の様な事項を大切に製作していきます。
まず、ひな飾りの完成写真をご覧ください。
使用材料のご説明
①お雛さんの材料
髪飾りはパドック(珍しい赤い木)と栃の1㎜厚の物を張り合わせています。色目をできるだけ華やかに製作します。
頭部
黒い材はウェンジ(非常に硬い木でまた高価です)顔は栃材(できるだけ白くて木目が目立たない)を使用する。栃材を顔の部分に使用する際は杢目が目立つと顔の表情が大きく変わる為です。
胴体
製作ロッドにより若干の違いが有りますがケヤキ、檜、ウォルナット、パドック、栃、紫檀、黒檀
カムイウッド、モンキーポッド(この~木なんの木 ?) お雛さんが持っている扇子はパドック材です。
お雛様の頭部の制作
| 材料のウェンジ板厚18㎜に40∮と10㎜偏芯させて30∮の墨入れを行う。 これは顔部分の30∮に栃材の顔を入れるための墨です。 |
| 30∮の穴を前髪になる部分を7㎜残して穴加工します。 |
| |
球面処理後顔となる栃材を挿入、ボンドで接着 接着後に顔の部分を球面にするために取り付けた6㎜の丸棒をカットし、ベルトサンダーで顔後部になるウエンジ材を接着する為に平面にする。 | 挿入、接着後の顔部分 |
以上がお雛様の頭の制作工程です。
頭の後部を張り付けた四角の加工品をベルトサンダーで頭の恰好に仕上げます。
非常に硬い材料ですのでベルトサンダーのベルト粒度は80番です。
常に頭の恰好をイメージをしながら慎重にサンディングを行います。
白い栃材にサンディングした黒い粒子が付着しないようにマスキングテープで栃材全体をカバーして作業します。
とんでもなく黒い粉塵が多量に発生しますので防塵マスクとフェイスマスクをし集塵機は必ず必要です。
胴体の制作
胴体は色目の良い材(ウォルナット、ケヤキ、ブビンガ等)を着物の色目をイメージしながら寸法を決定し接着していきます。幅は80㎜とし、板厚12㎜です。
クランプで鋏みやすいように平行にカットする、接着ができた段階で台形にカットする。
台形の材に裏板ここではウォルナット材を貼り付け、後にベルトサンダーで全体をサンディングし胴体の状態にする。
合わせ材には接着前に首元の三角の材(成型後にサンディング出来ないのでバフ仕上げまでしています。)を接着しています。
お内裏様の制作
お雛様同様の工程で製作します。3個の写真をご覧下さい。
| 胴体中心の着物の部分です。 材料はタモ材とケヤキ、栃で着物の帯と首元の襟部分を加工します。 この時点で両サイドの部材を接着しますとサンディングできないので粒度600番 かけ、その後バフ仕上げをしておきます。 |
| 外側の材(ウエンジ)はお雛様に使用している頭と同様です。 内側の丸みの部分は接着前にサンディング、バフ仕上げ済です。 |
| ここでは先に胴体の外側を円弧にカットしてしまいましたので切り離した材を利用してハタガネで圧着接着しています。 ※先に円弧にカットしたのは失敗です。 ハタガネを使用する際は平行な材でないとできません。 |
お題様の頭製作
旋盤で栃材(お雛様の顔と同様に白い材)を整形ここでは4個同時制作します。
制作した頭に30∮のエンジュ(黒い髪となる)を接着
接着した頭(ウェンジ部材)に烏帽子を取り付ける溝を加工
この作業は昇降盤に30∮の穴加工した治具を利用し深さ12㎜の溝加工します。
斜めにカットした材に後ろ髪となるウェンジ材を接着
後ろ髪の接着
ベルトサンダーで頭の恰好に整形
ベルト粒度は80番です、凄まじい黒い粉塵が出ます。左手の下にあるホースが集塵機に繋がっています。ここでは集塵マスク、フェスマスク、体に黒い粉塵が付くのを避ける為、薄いウィンドブレーカーを着て作業しますが工房内は酷い粉塵となりますので天井裏に取り付けたダクトファンを回し外気へ放出しています。
たくさん製作中
以上がひな飾りの大まかな製作工程です。
非常に手間が掛かり時間も相当必要になりますが、もともと好きな木工ですので製作中は夢中になり、全く苦になりません。
お雛様とお内裏様が完成すると後は"ぼんぼり"ひし餅"花台などを製作し完成です。
収納箱に"ひな飾り"のレーザー彫刻をして完了となります。